PCOSの原因は一つではありません。PCOSには多くの原因があります。それは残念ながら未解明です。
原因が人によって異なるので誰にでも同じ治療をするわけではなく、患者さんによってその人にあった治療を選択する必要があります。
排卵誘発
生理不順のため、正常な排卵を起こすために排卵誘発剤を使います。
ここで注意しなければならないことは単に排卵すればいいわけではなく多胎妊娠を避けることです。
誘発剤で強い刺激をするとたくさん卵胞が発育してしまいます。双胎(双子)などの多胎妊娠が起こることは避けなくてはいけません。
PCOSでは排卵誘発剤により多くの卵胞が発育して卵巣が大きく腫れ上がり、お腹や胸に水がたまることがあります。
これをOHSSといい、重症化すると入院が必要となることがあります。PCOSの患者さんはOHSSになりやすいので注意する必要があります。
多胎妊娠やOHSSを避けるため必要最小限の排卵誘発を行う必要があります。
経口薬のクロミフェンの内服で約40%が排卵します。無効の場合にはレトロゾールなどの経口薬や注射薬を用います。
排卵させるだけなら薬や注射を使えば良いのですが、一つだけ排卵させるのはとても難しいのです。
薬の量が少ないと排卵しない、多いとたくさん排卵するので多胎妊娠のリスクが上がります。
注射を多く使わないと排卵できない重症の排卵障害の場合は、次に示す手術療法や体外受精をおすすめします。
肥満に対する対策
肥満を伴うPCOSには減量が効果的です。
肥満の女性は卵子の発育が悪くなるのは知られています。ダイエットすることにより排卵が正常化することあります。
ただし、急激に体重を落としては逆効果となります。減量は最大月2キロまでにしてゆっくり減量する必要があります。
健康体重まででなくても10%程度の減量で効果が出ますので、肥満のPCOSの患者さんは他の治療と並行してダイエットをお勧めします。
肥満のPCOSは糖尿病予備群ともいえます。妊娠中に血糖値が上昇します。
このような患者さんはダイエットだけでなくメトホルミンというインスリン抵抗性改善薬を併用して排卵を改善します。
ただし、逆効果となることや副作用が強く出る場合もあるので、PCOSだからといってとりあえずメトホルミンを内服するべきではありません。
体外受精
排卵誘発剤で妊娠しない場合、多胎妊娠やOHSSを予防できない場合は体外受精となります。
体外受精で多くの卵子を採卵しても受精卵を1個だけ子宮内に移植すれば多胎は防ぐことが出来ます。
採卵と胚移植の月を別にすれば多くの卵子が発育しても、卵巣の腫れが落ち着いて別に月に胚移植を行うことでOHSSを回避して安全に治療することができます。
体外受精ではOHSS予防のための薬剤を使用することでさらに安全に治療を行うことができます。
PCOSの体外受精ではそうした合併症予防の万全の対策をしつつも、患者さんにより細かく薬剤を調整して質の良い治療することが大切です。
PCOSの患者さんは生理が順調な方よりも少し早めに体外受精をすすめられることも多いと思います。
PCOSでは通常より多くの卵子がとれることが多いので、PCOSの患者さんに合わせた体外受精を行うことでほとんどの方が妊娠可能です。
時間は少しかかりますが、根気よく治療していくことが大事です。
腹腔鏡下卵巣多孔術(LOD)
LODは手術で卵巣に多数の小さな孔を開けることにより卵巣中のホルモン状態を改善させる治療です。
手術のための入院が必要ですが、LODで自然に排卵するようになったり、クロミフェンに対する反応性がよくなったりします。
その効果は1年ほどと言われています。この手術により完全に自然排卵することもあります。
PCOSで体外受精を行ってもなかなか良い卵子が取れない場合にはこの手術で卵子の質を改善することが期待できます。
体外受精の前に実施するか、体外受精で結果が悪い場合に実施するかは意見が分かれるところですが、
体外受精でOHSSを起こらないようにする対策が出来るようになったので、体外受精を行っても悪い卵子しか採れない場合に手術を行うので良いかと思います。