着床不全の治療成績
体外受精を繰り返しても何も対策しないで治療をするとだんだん妊娠率は下がる一方のはずです。
治療法の微修正を行っていかないと妊娠率は下がり5回目くらいでは10%未満となってしまいます。
当院の治療成績では上のグラフが示すように、繰り返して胚移植して妊娠しない5回目の患者さんでも妊娠率が3割以上と高いままとなっています。
これは過去の治療を詳細に分析して次の治療に生かす対策をしているためです。
つまり反復不成功であっても妊娠可能な方法があるということになります。
着床不全の治療の実際
胚移植を数回繰り返しても妊娠できない場合は着床障害としての検査・治療を行います。
子宮内膜ポリープ
子宮鏡検査でポリープの位置関係を診断します。
着床不全の原因のとなりそうであれば手術で摘出します。
慢性子宮内膜炎
近年、着床不全や反復流産、早産に関係することが分かってきました。
子宮鏡検査と子宮内膜組織検査(CD138免疫染色)にて診断します。
療は抗生剤などにより感染を抑えます。
子宮内膜受容能(「着床の窓」のズレ)
子宮内膜はいつ移植しても胚を受け入れるわけではありません。胚を受け入れてくれる期間のことを通称「着床の窓」といいます。
この窓が開いているときに胚移植を行わないと正常胚でも着床が起こりません。
移植の時期は一般的にこの窓が開いているとされているタイミングで行います。
着床の窓がズレている方が反復着床不全の方の30%くらい存在するとされています。
着床の窓がズレていないかを予測する検査がERAやという検査です。当院ではERAより新しいERPeak検査も可能です。
着床の窓がずれていると予測された場合は移植のタイミングを前後に移動します。
SEET法
着床する前に受精卵が分泌する成長因子などのサイトカインが子宮内膜を刺激し着床を促進するという考えから日本で考案された治療です。
採卵したあと受精卵を培養した培養液を凍結保存し、胚移植の数日前に子宮内に注入します。リンス療法とも呼ばれることがあります。
G-CSF療法
G-CSF(顆粒球コロニー形成刺激因子)を薬剤とした製剤を用いる治療です。
子宮内膜菲薄化例の治療でしたが、子宮内膜が菲薄化していない着床不全にも効果が認められています。
免疫異常(Th1/Th2検査)
免疫のバランスを見る検査の一つです。受精卵・胎児に対する母体側の拒絶反応が強い場合、妊娠維持がうまくいかなくなる可能性があり、これらの免疫バランスを評価する検査です。
拒絶反応を起こす可能性が高いと評価された場合、拒絶反応を抑えることで着床・妊娠維持が可能となるとの報告があります。
ビタミン・ミネラル
・ビタミンD欠乏
・銅/亜鉛
・血清鉄・フェリチン
ビタミンやミネラルが妊娠成立に影響することがあるともいわれています。
劇的な効果が期待できるわけではありませんが、対策が簡単なのと不妊治療以外の疾患の治療にもなるので検討してみても良いと思います。
当院での着床不全治療の具体的内容・費用については公式サイトをご参照ください。