多嚢胞性卵巣症候群(PCOS) | 不妊治療・体外受精専門の池袋えざきレディースクリニック

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは、女性の20人に1人くらいに見られます。
比較的若い20代の女性に多く発症します。

卵巣内で男性ホルモンの濃度が上がり、排卵しにくくなる疾患で排卵しなかった卵胞は卵巣に残ってしまい、超音波検査でみると多くの卵胞がみえるため、このことから多嚢胞性卵巣(PCOS)と呼ばれます。

排卵障害のため、不妊の原因になることが多いという特徴があります。
また年齢の割に流産しやすい傾向があります。

通常、排卵には脳下垂体から分泌されるLHとFSHという2つのホルモンが関わっています。

PCOSではこのバランスが崩れて、LHばかりが過剰分泌されることによって排卵がうまく行われなくなります。
これ以外のホルモンや複数の原因がかかわって卵巣内男性ホルモンが増加し排卵が抑制されます。

多嚢胞性卵巣症候群は正常に近い症例から典型的なものまで、その程度は様々です。
日本産科婦人科学会では2023年に以下の3項目をすべて満たした場合に、多嚢胞性卵巣症候群と診断すると定義しました。

  • 1. 月経周期異常
  • 2. 多嚢胞性卵巣またはAMH高値
  • 3. アンドロゲン過剰症またはLH高値

PCOSも原因はたくさんあり、治療法も人により違います。
PCOSと診断されたら一律で同じ治療を行うわけではありません。

PCOSは多くの原因によるので一律の治療があるわけではなく多くの治療の種類があります。

1.排卵誘発

生理不順のため正常な排卵を起こすために排卵誘発剤を使います。

ここで注意しなければならないことは多胎妊娠を避けることです。
強い刺激により多くの卵胞が発育して双胎(双子)などの多胎妊娠が起こることは避けなくてはいけません。
双子では6倍、三つ子では15倍の新生児の脳性麻痺のリスクがあるといわれています。

多胎妊娠を避けるため必要最小限の排卵誘発を行う必要があります。
弱い誘発剤である経口薬の内服で約60%が排卵しますが、無効の場合には強い注射薬を併用します。

PCOSでは一つの卵だけ排卵させるのはとても難しいのです。
薬の量が少ないと排卵しないですし、多いとたくさん排卵するので多胎妊娠のリスクが上がります。

誘発剤の量や種類の組み合わせを調整しても排卵しない、ないしは多胎妊娠のリスクがある場合は下記に示す手術療法や体外受精をおすすめします。

体外受精であれば、多くの卵子が発育しても、卵巣の腫れが落ち着いてから、受精卵を1個だけ子宮内に移植することで安全に治療することができます。

PCOSの患者さんで誘発剤の服用で妊娠するのは40%くらいになります。
効果が見られない場合はPCOSでない患者さんより早めに体外受精を行います。

2.肥満に対する対策

脂肪の中には卵子の発育を邪魔しているホルモンが含まれるため、肥満を伴うPCOSには体重を減らすことが効果的です。

減量で排卵するようになる、あるいは少量の排卵誘発剤で排卵が起こるような体質になり、治療効果が高くなります。
しかし急激に体重を落とすのは逆効果となります。
減量は月に2キロまでにしてゆっくり減量する必要があります。
身長158㎝で体重70㎏程度の肥満ではー4㎏を目標に数か月かけてゆっくりと減量するとよいでしょう。

排卵誘発剤を使用する前に減量しておくことで治療効果が高くなります。
肥満のPCOSでは耐糖能異常という状態の人がいます。
いわゆる糖尿病予備群です。
このような患者さんはダイエットだけでなくメトホルミン(インスリン抵抗性改善薬)という糖尿病治療薬を併用して排卵を改善します。

海外のPCOSは肥満や耐糖能異常が多いのですが、日本を含めアジア人のPCOSでは、肥満や耐糖能異常の患者さんは20%未満くらいと少ないことが特徴です。
むしろ痩せ型の体形の方のほうがPCOSが多い傾向にあります。
肥満や耐糖能異常がない場合はメトホルミンを内服するべきではありません。
極端に痩せすぎているのもPCOSとは別で妊娠・出産の妨げとなります。
不妊治療のゴールは妊娠ではなく出産です。
安全な出産のためにも極度の痩せ、肥満は気を付けなければなりません。

3.体外受精

排卵誘発剤でうまく排卵が起こるようになって、数回治療して妊娠できない場合は次の段階として体外受精となります。

排卵誘発剤で多くの卵胞が発育してしまう場合にも多胎妊娠を避けるため体外受精を行います。
多くの卵子が発育しても体外受精では一個の卵だけ胚移植すれば双子にはなりにくいからです。

PCOSの場合未熟卵子や質の悪い卵子の割合が多くなりがちですが、通常より多くの卵子がとれることが多く、その中から良い受精卵を選んで移植することで、多くの方が妊娠できます。
時間は少しかかりますが、根気よく治療していくことが大事です。

PCOSでは発育卵子が多くなりやすいので採卵の合併症の卵巣出血やOHSS(卵巣過剰刺激症候群)といった合併症が起こりやすくなります。
多嚢胞卵巣にはそうした合併症に対して万全の対策をしながらの治療が大切です。

多嚢胞性卵巣症候群の患者さんは少し早めに体外受精を勧められることも多いと思います。

4.腹腔鏡下卵巣多孔術(LOD)

LODは手術で卵巣に小さな孔をあけることにより卵巣中のホルモンの状態を改善させる治療です。
手術のための入院が必要ですが、LODで自然に排卵がおこる、ないしは内服の弱い誘発剤のみで排卵するようになります。
その効果は1年ほどと言われています。
この手術により完全に自然排卵することもあります。

LODはすべてのPCOSに効果があるわけではなく、特定のホルモン検査値の異常がみられる場合に有効です。
肥満を伴うPCOSにはあまり効果がみられません。

体外受精の普及で手軽に体外受精が可能になったことと、入院手術が必要となるために現在ではあまり行われなくなりました。
しかし通常の治療で効果が少ない場合は、治療の選択肢の一つとなります。

またPCOSでは流産の頻度が高くなりますが、この治療により流産率が低下するとされています。

PCOSは年齢の若い女性に多く見られるので、未婚などで今すぐ妊娠を希望していないケースもあります。
今すぐ妊娠を希望していない場合は、将来の妊娠に備えて低用量ピルを服用します。

PCOSでは生理不順のため、子宮内膜増殖症や子宮体癌といった子宮の病気になりやすいので、低用量ピルでそれを予防します。
妊娠を希望する時期になったら誘発剤などを用いて妊娠のための治療を行います。
妊娠を希望している時期でないのであれば排卵誘発剤を使用する必要はありません。
池袋えざきレディースクリニックは不妊治療の専門クリニックですので、妊娠を希望していない方への低用量ピルの処方などの診療は行っていません。

・肥満があれば減量とメトホルミン服用

・肥満がなければ適切な排卵誘発剤の投与

・誘発剤での妊娠が困難であれば体外受精

・必要に応じて手術療法

排卵誘発が必要ですが、副作用を起こさないような丁寧な排卵誘発剤の使用が重要です。
まずは一般不妊治療からですが、多嚢胞性卵巣症候群の場合は早めに体外受精に移行する必要があります。
多嚢胞性卵巣症候群は年齢が若い方が多いので体外受精での妊娠率は高い傾向にあります。

多嚢胞性卵巣症候群の不妊治療は、まずは一般不妊治療から行うべきです。
しかし、半数の方は体外受精が必要となるので、多嚢胞性卵巣症候群の治療経験が豊富で、副作用を予防して体外受精を実施しているクリニックで治療を受けることが望ましいでしょう。

池袋えざきレディースクリニックは多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の不妊症に対する専門的治療に取り組んでいます。