胚移植反復不成功(着床不全)|不妊治療の池袋えざきレディースクリニック

胚移植反復不成功(着床不全)

胚移植反復不成功
(着床不全)

胚移植反復不成功(着床不全)

反復着床不全、着床障害とはどういうことでしょうか?

40歳未満で4個の良好形態の胚移植を行っても妊娠しないことをいいます。

4個(回)の胚移植というのは体外受精の説明の時に胚移植の回数をお伝えしたと思いますが、その回数と同じです。
胚移植をこれだけ繰り返すと80-90%の方に着床・妊娠ができるという回数です。
この胚移植の繰り返しの回数は年齢によって異なるので、20代の方には3回、40代の方には5回などとお伝えしています。

移植される胚はすべて同じではなく「妊娠できる正常胚」「妊娠・流産する胚」「妊娠しない胚」の3種類です。
妊娠できる胚の割合は通常半分以下です。外見のグレードでは事前に中身がわからないため妊娠できる胚が移植されるまでの繰り返しの治療が必要となります。

約10%の方が反復着床不全と診断されことになります。

着床がうまくいかない理由は以下の3つになります。

胚の染色体異常

一般に体外受精で妊娠しない原因は一番多いのは胚側の原因です。
胚には染色体というものがあり、23種類が2本ずつペアになり46本の染色体があります。
染色体数が45本であったり、構造が正常でないと移植しても妊娠しないか流産します。

染色体異常胚の割合です。38歳くらいで約半数の胚に染色体異常があることになります。
年齢が高くなるにしたがって染色体異常胚は増加していきます。
20代よりも40代の方が妊娠しにくいのは染色体異常の胚の割合が増えてくるからです。

現在の体外受精では胚の評価を胚の形態で判断しているために染色体の異常があるかを完全に知ることができません。そのために移植されている胚のうち半数くらいが染色体異常の胚となります。
それが繰り返しの胚移植を必要とする理由ということになります
PGT-A(着床前異数体検査)という検査で胚の染色体を調べることが出来ます。PGT-Aは日本では臨床研究が始まったばかりで簡単にできるわけではありません。

PGT-Aを実施しなくても胚移植を繰り返すことで胚の因子を除外できることになります。
それは繰り返しの移植を行なうと正常胚が1回くらいは勝手に移植されることになるからです。

反復着床不全が40歳未満で4回の胚移植をおこなっても妊娠しない患者と定義している根拠は4回も胚移植を繰り返せば確率的に正常胚が少なくとも1回は勝手に移植されるはずということに基づいています。

胚の染色体異常のうち数の異常を調べる検査です。
染色体正常胚のみを移植することにより無駄な移植が減らせるというメリットあります。
異常胚の移植を避ける目的の検査なので採卵あたりの妊娠できる確率が上がることはありません。

この検査のデメリットは仕組み上、正常か異常かはっきり判定できない胚が数多くあること、そしてなによりも検査により胚の一部を採取するため正常胚にダメージをあたえてしまい妊娠出来る可能性のある胚をダメにしてしまう可能性があることです。
反復流産患者さんには流産を減らせる可能性があるので有用かと考えられます。

まとめ
  1. 1-3回目くらいまでの移植で妊娠しない原因は胚因子(染色体異常胚の移植)が多い
  2. それ以上の反復着床不全の場合は胚因子以外の原因(子宮因子・母体因子)が多い

PGT-Aは現在日本では通常の診療としては行うことができません。

2020年より日本産科婦人科学会が臨床研究という形で他施設合同の研究を開始してPGT-Aの有効性について検討を開始したところです。
この研究対象としてのみ日本では着床前診断を受けることができます。

当院は着床前遺伝子診断の認定登録施設ではありますがPGT-Aの臨床研究には現時点では参加しない予定です。
理由として2018年の海外での大規模な臨床研究でこの検査を施行しても採卵あたりの妊娠率は改善しないという報告が出たことによります。
ただし、研究対象の選択によっては有用な検査になり得るので日本の臨床研究の結果によって当院がPGT-Aを実施するか検討します。

エコーで見えることもありますが、子宮鏡検査でポリープの位置関係を診断します。
着床不全の原因のとなりそうであれば手術で摘出します。

近年、着床不全や反復流産、早産に関係することが分かってきました。
子宮鏡検査と子宮内膜組織検査(CD138免疫染色)にて診断します。
治療は抗生剤などにより感染を抑えます。

子宮内膜はいつ移植しても胚を受け入れるわけではありません。胚を受け入れてくれる期間のことを通称「着床の窓」(WOI: Window Of Implantation)といいます。この窓が開いているときに胚移植を行わないと正常胚でも着床が起こりません。移植の時期は一般的にこの窓が開いているとされているタイミングで行います。
着床の窓がズレている方が反復着床不全の方の30%くらい存在するとされています。着床の窓がズレていないかを予測する検査がERA®やERPeak℠という子宮内膜受容能検査です。
着床の窓がずれていると予測された場合は移植のタイミングをずらして行います。

原因不明子宮内膜異常の対策

子宮内膜スクラッチングは子宮内膜に器具などで引っかき傷(スクラッチ)をつけて子宮内膜が修復される過程で分泌される成長因子、組織修復因子などのサイトカインなどが着床を促進するのではという仮説から行われている治療です。
理論が明らかになっていませんが一定数以上の患者さんには効果があるといわれており、当院では積極的に行っています。

子宮内腔洗浄は子宮の中に原因不明な着床を阻害する物質が存在することに対して子宮の中を洗浄する治療法です。通常は子宮鏡検査の際に一緒に行います。(費用は子宮鏡検査に含まれます)

着床する前に受精卵が分泌する成長因子などのサイトカインが子宮内膜を刺激し着床を促進するという考えから日本で考案された治療です。採卵したあと受精卵を培養した培養液を凍結保存し、胚移植の数日前に子宮内に注入します。リンス療法とも呼ばれることがあります。

PRP療法は、患者さんの自分の血液から抽出した「多血小板血漿(PRP)」を、子宮内に注入する再生医療です。着床不全、特に子宮内膜が菲薄化している場合などに効果が期待されています。

PRP療法は血小板から放出される成長因子等の成分により着床の促進効果が期待されている新しい治療です。整形外科でアスリートの故障やケガに対して以前より行われている治療です。
薬物ではなく自分の血液を使用するので有害な成分が入ることがないことが利点です。

一方不妊治療としては新しい治療であるために、効果のある患者さんがいることはわかっていますが、どのようなタイプの着床不全の患者さんに有効かはまだ明らかになっていません。有害でないのですが厚生労働省指定の再生医療に分類されており費用が高額なので、むやみやたらに試してみるという治療ではありません。
当院ではPRP療法をさらに進化させたPFC-FD療法という治療を採用しています。
これは抽出したPRPをフリーズドライ化して保存し、融解後に使用する高濃度のPRP療法となります。

G-CSF(顆粒球コロニー形成刺激因子)を薬剤とした製剤を用いる治療です。
子宮内膜菲薄化例の治療でしたが、子宮内膜が菲薄化していない着床不全にも効果が認められています。

副作用も少なく短時間で終わることが長所の検査です。

免疫異常

免疫のバランスを見る検査の一つです。受精卵・胎児に対する母体側の拒絶反応が強い場合、妊娠維持がうまくいかなくなる可能性があり、これらの免疫バランスを評価する検査です。

拒絶反応を起こす可能性が高いと評価された場合、拒絶反応を抑えることで着床・妊娠維持が可能となるとの報告があります。
この検査の値をもとに免疫のバランスが良くないと判断し
免疫抑制剤プログラフ®(タクロリムス)を服用し免疫反応を抑えます。

ビタミンやミネラルが妊娠に影響することがあるともいわれています。
劇的な効果が期待できるわけではありませんが、対策が簡単なのと不妊治療以外の疾患の治療にもなるので検討してみても良いと思います。

> ビタミンD欠乏

25OHビタミンDが低値であると着床率が下がるとの海外研究がありました。
しかし当院では1000人以上の方に25OHビタミンDを測定しましたが25OHビタミンDの値と着床率は関係ないとの結論でした(論文未公表)。
海外の報告と結果が異なるのは、おそらく人種の違いでないかと推測しています。
ただビタミンD欠乏には流産、うつ病、悪性腫瘍などの不妊症以外の病気のリスクの可能性があります。25OHビタミンDが低値であった場合は日光浴(10分程度で十分)かサプリメントの服用をお勧めしています。

> 銅/亜鉛

亜鉛と銅はシーソーのようにバランスをとっています。亜鉛が下がると銅が上がります。
亜鉛が低い場合はサプリなど補充を検討してもよいかもしれません。

> 血清鉄・フェリチン

女性は月経があるため血清鉄や貯蔵鉄(フェリチン)が低い傾向にあります。
フェリチン低値の場合、鉄分を多めの食事ないしはサプリで摂取すると良いでしょう。

子宮収縮抑制剤

胚移植の際に子宮収縮をおこすと妊娠率が低下することが10年以上前より報告されています。
胚移植の際に子宮収縮抑制剤を使用するという方法があります。残念ながら多くの薬剤が試されてきましたが妊娠率を改善する治療は存在しません。

胚移植手技

PGT-Aにて染色体正常胚を選び胚移植しても30%の方は妊娠出来ません。
多くの原因が考えられますが胚移植の手技による技術も影響するかもしれません。

子宮内にカテーテルという細い管を用いて胚移植を行います。乱暴な胚移植を行うと子宮収縮を起こし妊娠率は低下します。薬剤で子宮収縮を抑制することはできないので、子宮の収縮を起こさないような子宮への刺激の少ない丁寧な手技が必要です。

患者さんにより子宮や頸管の形や向きは異なりますので、患者さんにより胚移植のカテーテルを何種類も用意して使い分けています。

また移植する位置も重要です。適切な位置に移植しないといけません。数ミリずれるだけで成績に影響します。超音波で詳細に観察しながらピンポイントで胚移植を行います。
初期胚か胚盤胞かによって、また年齢によっても適切な位置は異なります。こうした違いがあることは当院の研究で明らかとなりました(専門学会にて発表済み)

どんなに良い胚を移植できたとしても移植の技術が悪かったら台無しです。
当院の医師は院長以下すべての医師がこの胚移植手技に習熟しています。毎月医師ごとに妊娠率の比較を行い手技の安定性を確認しています。

子宮鏡検査 8,000円
子宮内膜組織検査
(CD138免疫染色)
13,000円
ERA® 130,000円
(+薬剤費用:約3万円)
ERPeak® 110,000円
(+薬剤費用:約3万円)
EMMA®+ALICE® 7,000円
子宮内膜スクラッチング・子宮内腔洗浄 0円
(子宮鏡検査に含む)
SEET法 22,000円
25OHビタミンD検査 6,000円
銅/亜鉛、血清鉄/フェリチン検査 3,000円
PRP-FD療法(1年間保管費用含む) 150,000円
(+感染症検査10,000円)
G-CSF療法 25,000円

※費用は全て税別となります。

*印は原則当院で体外受精・採卵を行った方のみとさせていただきます。
他院のかたは【お問い合わせフォーム】よりお問い合わせください。

※費用は全て税別となります。 (2022/04/01現在)